昨晩は長潮。日中から夕方にかけて少し雨が降り、垂直護岸は湿った状態に。 気温は暑くもなし寒くもなし。湿度はそこそこあったでしょうか。 夜の川ミミズ観察。あまりにも多くのことに出会いすぎて、整理しきれないのですが、今回はその中のひとつを紹介したいと思います。 6月に入って急に増えだした中型ミミズ。こちら私は「しまぐろミミズ」(旧・富山ブラック川ミミズ)と呼んでいたミミズであります。 これはこの川だけでなく、比較的どんな川にも生息しているミミズで、別の川ではヤナギタデの根っこあたりにたくさんいる姿をしばしば観察していました。川底にも出てきますが、どちらかというと陸地や護岸に依存するタイプ。独特の黒っぽい縞模様などから、おそらくはキクチミミズかと思っています。 これがですね、昨晩はすごかったんです。 (注意! 今回、ちょっといつにも増して・・な画像が次々と出てきますので、苦手な方は・・すでにこのブログを読んでいないかとも思いますが、さすがにちょっとだけご留意ください・・)
さて。 こんな感じに、大量に護岸に這い上っていたんです。 大から小から、環帯のできあがった成体からまだ未成熟な幼体まで。 数えていたら、それだけで朝を迎えてしまいそうなくらい。 くんずほぐれつといいますか・・。 束になっている状態も・・。 そんななか、初めて見てしまったんです。 それはこちら! 動物の交尾にあたる、ミミズの交接です。 ミミズにはオス・メスがありません。雌雄同体といいますか、精子をもつオスでもあり、同時に卵胞を産むメスでもあります。 交接とは精子を交換する行いです。一般的な動物の交尾はオスがメスに精子を受けわたしますが、ミミズの場合、このようにお互いに自分の精子を受けわたし合うようです(ちなみに交接しなくても子を産めるミミズもいます。我が家にいるのはそのタイプ…)。 違いが向き合って、それぞれから手のようなものを出して相手の体に乗せています。 これは「交接嚢」と呼ばれるもので、キクチミミズの特徴のひとつでもあるようです。 この交接嚢、雄性孔から飛び出すように出て、相手の受精嚢孔に差し込まれ、精子が注がれるようです。 当ブログの熱心な?読者の方ならお気づきかと思います。 このBの部分が雄性孔です。交接嚢はここから飛び出して、相手の受精嚢孔に差し込まれるわけです。 こちらは先日観察した(おそらく)ハタケミミズの受精嚢孔です。頭の近くにありますが、ここに差し込まれるわけですね。 幸運にも交接する前段階から観察をすることができました。 写真が赤いのはミミズを脅かさないよう赤色ライトを用いているためです。 まず、このように相手と向き合うように出会うと、お互いに環帯の後ろ側あたり(雄性孔)あたりを吻端でまさぐります。実はこれ以前に、左側のミミズが一度そのまま通り過ぎようとして進んだのですが、右側のミミズが後ずさりして、この状態に持ち込んだように見えました。 20秒ほどはお互いに確認しあっているような行動を見せていました。 おそらくミミズの吻端は感覚器のようなものなのでしょう。ニゴイの口髭のように…。 そして、わかりますでしょうか? 右側のミミズの吻端の左下あたりに、左側のミミズの交接嚢が見えています。実はこの交接嚢、初めから出ているわけではなく、このまさぐり合いを通して出てきたように見えました。 丸囲みの部分です。 お互いに、相手の交接嚢を認めたのでしょうか。スルスルと互いに進みあい・・ どうやら相手の受精嚢孔に差し込んだようです。交接の開始です。 丸囲みの部分が接続部です。 お互いがドクッドクッと脈打つような、あたかも精子を相手に注いでいるような行動を取っていました。 この状態、5分ほど観察していたのですが、終わる様子はなし。結構長いのかもしれません。 ここで脅かさないように光の量を調整しながら白色LEDにチェンジ。 見辛いですが、赤丸囲みのところが接続部となります。裏側がどうなっているのかはわかりませんでしたが、片側だけのように見えました(雄性孔は通常2つあるので交接嚢も2つあるのだと思いますが、片方だけのような気がします)。面白いのは、交接しているミミズの体を小さなダニのような虫が次々と歩いてくることです。一体なんだと思ってそこを歩いているのか・・。 右のほう、赤丸で囲んだところにダニのような小さく白い虫がいます。 別の小さな虫が片方のミミズの吻端に這ってきた時は、明らかに嫌がって首を振っていました。それでも交接は行われたまま。 終わる様子がないので、この場を離れました。 垂直護岸への大量の這い上りと交接行動の観察。 一見、這い上がりは相手探しのため・・のようにも思える光景でした。 ですが一方で、数え切れないほどのミミズが這い出しているにもかかわらず、交接はこれを含めて3例だけでした。 しかも興味深いことに、いずれも5m以内ぐらいの近くの場所で3例。夢中になって下流に下り、気づけばアンタッチャブルにしていたはずの発光体の棲家?近くまで進んでいて、慌てて引き返しました。ただ、大量に這い上ったミミズは互いに体を寄せ合うことは多々見られても、互い違いの体勢になっていることはとても少なく、どちらかといえば同じ方向を向いていることが多かったです。 この大量の這い上り、条件のひとつが「雨で護岸が湿っていること」であることは疑いようがありませんが、湿っていれば普通に見られる光景なのか、それとも湿っている以外の条件も必要なのか・・。その点も気になるところです。 そしてこのキクチミミズと思われる「しまぐろミミズ」は交接嚢をもつことが特徴らしいのですが、交接嚢を持たないミミズは互いに孔と孔でどのように精子を受けわたすのか・・。やはりちょっとした交接器は伸びてくるのか・・。そして多くのヒトツモンミミズや「クリームオヨギデカミミズ」のように、そもそも雄性孔を持たない個体は、交接をしないのか? 単為生殖なのか? それとも見えないだけで受精嚢孔はあって、精子を受け取ることは受け取るのか? あらゆる謎が膨らんできます。 私の当面の目標は「クリームオヨギデカミミズ」の交接もしくは産卵を川の中で見ることなのですが(それを見ることで川の中で卵から暮らしていることが確かめられるため)、その目標にも繋がる今回の交接行動の観察でした。〈若林〉◻︎
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「しまぐろミミズ」の生態、とても興味があります。シーボルトミミズと同様の集団移動のことと長潮(下弦)のころの移動であることです。非常に貴重な記録です。本格的な同定をされてはいかがでしょう。また、さしつかえなければ現場を見させていただけないでしょうか。アマ・プロの研究者が興味を持っています。
コメントをいただき、ありがとうございます。また、興味深く読んでいただき、ありがとうございます。
潮時との関連はとても興味深いところです。
一度、DMにてご連絡いたします。
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