今日はとても強い南寄りの風が吹いています。明日あたりから一気に気温が上昇する予報…。 さて。このところはもっぱら川ミミズ観察ばかりです。一昨年、昨年は、ほぼ7月のみ観察していた川に、今年は5月から入り、その経緯を見ていると、色々と面白いことがわかってきました。 目下、最大の謎は、突如現れる大型ミミズたちがどこからやってくるのか?について。 護岸の隙間の、恐らくはヒトツモンミミズ。 私が「大型ミミズ」と呼んでいるのは15㎝前後ぐらいよりも大きなミミズのことですが、特に最近はこのヒトツモンミミズが、かなり数を増やしています。 6月初旬に最初のヒトツモンミミズをみつけてから、日を追うごとに数を増やし、今では中型種の「しまぐろミミズ」(おそらくはキクチミミズ)とともに、この川のメインキャストに上り詰めました。さらに一昨日はハタケミミズもちらほら。そして一昨日から一日、3匹ずつぐらい観察しているのがこちら。 ホソスジミミズ・・かな? このタイプも増えてきました。 一方、5月初旬から観察できていた大型ミミズである「クリームオヨギデカミミズ」は、相変わらずポツリポツリとしか姿を表してくれません。 昨日も半ば乾いた護岸を這っている姿を観察することができました。 納得の蛍光発光。 面白いのは、この「クリームオヨギデカミミズ」は水中の川底にぷかんとたたずんでいたり、全身をあらわにして護岸を上っていたりはするのですが、ヒトツモンミミズや「ツートーンオヨギデカミミズ」のように護岸の穴から顔を出している姿はほとんど見ないんですよね。 これはヒトツモン。 こっちは「ツートーン」 彼らはだいたい、このような姿で見つかります。逆に言えば川の中で見つかるのは「クリーム」の割合が高いということでもあります。 で、気になっていますのは、近頃とみに数を増やしているこれら「クリームオヨギデカミミズ」以外の大型ミミズがどこからやってきているのか?という問題なのですが・・。 川の様子をざっくりと描いて見ました。川は二面護岸で、両岸には垂直に近い4mほどのコンクリート護岸がそびえ、その上は花壇や生垣のようになっています。通常、私が観察をしているのはAのような護岸のきわです。10㎝ほどの水位があり、水面近くに苔が繁茂しています(春はほとんど生えていません)。護岸には所々に隙間のような穴が空いており、その中は土担っていると思われます。多くの川ミミズは湿った護岸の穴、もしくは苔の中にいます。そして雨が降って護岸が濡れると、結構上の方にまで護岸を這い上る姿を観察することができます。Bのような砂礫の中洲もありますが、ミミズは多くありません(というか夏場はほぼ見ません)。対して所々にあるCのような植物の生えた陸地(泥だまり)には、とてもたくさんのミミズが棲んでいると思われます。なぜそれがわかるかというと、護岸が濡れると這い上がるミミズの量が、Cのような場所では特に多いからです。またいわゆる陸と水中の境目といったエコトーンでもあるCは常に湿っていますので、雨が降らない日でもミミズは徘徊しています。「しまぐろ川ミミズ」もヒトツモンミミズもとても多いです。おそらくは腐った植物や、流れに運ばれて根っこの周りなどに溜まった有機物がミミズの餌であるためかと思っています。餌が豊富なところに多く棲んでいる、と考えています。 そんななか、私が好んで観察しているのはAやBなど、あえて餌が少ないと思われる川の中(水中)に現れるミミズたちです。それらを川ミミズと呼んでいます。 ぶっちゃけエコトーンに暮らすミミズにとっては陸地も川底の土中も変わらないのではないかと思います。なぜなら水位は上下するからです。同じ場所でも雨が降れば数分で陸地だった場所は水没し、そこは水中の川底となります。ちなみに上図のCのような場所も水位が上がれば完全に水没します。 つまり、ほとんどのミミズはそもそも、川の中でも暮らせるのではないか、というわけです。 ただ、その中には川の中(水中)を好むものと、陸地の土中を好むものがいるのではないか?と思ってまして、私は「川の中(水中)を好むもの」に強く興味を惹かれています。 AやBのような環境は、Cのような環境よりも(おそらく)餌が少ないはずです。にもかかわらず、AやBに現れるミミズがいます。 彼らはなぜ、そこにいるのか? これが目下のところ、最も気になっていることです。 ひとつは、ちょっと残念(?)な仮説ですが、垂直護岸の上から落ちてきている、ということです。ミミズは這い出し行動を行いますので、雨の日などに動き回った挙句、護岸からポロリと落ちて、そのまま仕方なく、餌の少ないAやBで暮らしている、という仮説です。実はヒトツモンミミズなど、成体の観察数が急に増えているミミズについては、その可能性を疑っています。 餌の豊富な(そして土の中でも暮らせる)Cで成長したものがAやBに分散している、とも考えられます。特にヒトツモンミミズはとても泳ぎが達者でするすると川を上流側へも上っていきますので、難しい話ではないと思います。ただ、この場合、あえて餌の豊富なCから旅立つ理由が気になるところです。 もうひとつは、もともとAやBを好んで暮らしている、という仮説です。 実際にAでは川底の石と砂の境目に結構な数のミミズがいます。日中は川底にいて、夜になると這い出して護岸に上がり、苔周りについた有機物を食べるといった奴らもいるのではないでしょうか。ただ「中にはそんな変わり者もいる」といった感じなのか、「大部分がそんな暮らしをしている」のかは、私にとって大きな違いです。 そこで注目しているのは「クリームオヨギデカミミズ」です。 彼らはなんとなく・・ですが、この川では「大部分が川の中の暮らしをしている」タイプなのではないかと期待しています。 ・護岸の穴にあまり入らないこと ・川の中で見られることが多いこと ・5月に幼体と思われる小さなミミズを流心近くの川の中のアオミドロの中で観察していること ・Cのような場所で観察できていないこと ・細長いこと ・体が水っぽいこと などなど。ポジティブな要素がたくさんあるんです。
さて。 えらい長くなってしまいました・・。 ここで昨晩の様子を。 一昨日にたくさんいた「しまぐろ川ミミズ」は護岸にはいませんでした。乾いているためだと思います。 水際の湿った護岸では多数見ることができました。交接も3例観察できました。 上図のCのような湿った土のある陸地では多くの大型種・中型種が体を露わにしていました。 「しまぐろ川ミミズ」もこんな感じ。おそらく葉っぱの裏などでも普通に交接していることでしょう。 光をあてると逃げてしまいますが、たくさんいます。 発光体も写りました・・(虫かな?)。 ミゾソバとかヤナギタデとか、おなじみの植物。川ミミズはこの根っこの周りが大好きなようです。 徘徊しても乾いている護岸は登りません。物理的に上れないのでしょう。 こんな感じにのんびりしています。 大型種もいずれ、こんな環境で交接を観察することができるのではないかと予想しています。 ちょっと意外だったのがこちら。 いかにもたどり着いたばかりといった様子。すぐ横には流れがあります。 判別はできませんでしたが、ヒトツモンミミズではなく、雄性孔はあり。15㎝ほどでした。 気になったのは、ちょっとぐったりしていたことです。溺れて流されてきたような・・。 もしかすると、護岸からポトリと落ちて、流されるままに流されて、ようやくたどり着いた瞬間、だったのかもしれません。 そんな妄想を楽しみながら、特に環境AとCの違いにもう少し注目して観察してみたいと思います。〈若林〉◻︎
【お知らせ】川辺の自然観察をまとめた一冊、『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』発売中です!(アマゾンの販売ページはこちら) ★RIVER-WALK Vol.1~Vol.3発売中です!★
|