台風4号が九州に上陸したとの速報を聞きながら、少しだけ晴れ間の朝に川へ(その後、台風は温帯低気圧に変わりました)。 先日、「マッチョ虹色川ミミズ」を観察した段丘崖に接する川へ。 晴れてはいますが、まだ太陽の光は射し込んでいない時間帯。 アメリカザリガニの死骸が目立ちました。何者かに下半身を捕食されている? さておき。目当てはやはり「マッチョ虹色」です。 このところずっと気になっているのは「マッチョ虹色川ミミズ」と「クリームオヨギデカミミズ」。 川で見られるミミズは多種おりますが、この2種類は、なかでも水中の暮らしに適応したフトミミズなのではないかと・・。そんな期待を持ちながら、もう少し彼らの暮らしぶりについて知ることができれば・・と、またやってきたのでした。 前回、結構、砂れきや石をひっくり返しましたから、今日はあまり川床を乱さないままの観察をしていきます。 ハグロトンボのヤゴが見えたり、ヨシノボリの稚魚が泳いでいたりと、やはり様々な生き物が暮らしている印象。段丘崖が接する場所は湧き水の浸透が多いでしょうから、そこには特別な何かがあると思っています。 ・・と、思いもかけないものが、目に飛び込んできたのです!! 1mほど先の石の下から、するすると15㎝とちょっとぐらいの川ミミズが這い出してきたではありませんか!! おそらくこいつは「マッチョ虹色川ミミズ」です。時刻は7時52分。 実を言いますと、まるまる2年ほど川ミミズの観察を続けておりますが、夜以外にこのように自然な形で這い出してきた川ミミズを観察するのは初めてのことなのです。 基本的にミミズは夜行性ということもあり、夜の観察では川底を這い回るミミズは多々観察しています。 ですが、朝から夕方にかけての明るい時間帯に見るのは初めてだったと思います。 いや、一度だけ、蛇泳ぎをしながら川を下ってきた「マッチョ虹色」を見たことはあります。ただ、その前に上流域で川底の砂れきを私が掘り掘りしていましたので、その影響かと思っています。 今回のように、ほぼ完全に私の影響を排除できる状態での観察は初めてです(「ほぼ」というのは、どうしても川を歩くと振動は伝わっているでしょうから・・)。 具合が悪いのかとも思いましたが、健康状態は悪くなさそうでした。 観察していると、マッチョは矢印の先の鉄の矢板に向かいました。 ちなみにこのあたりは、流れがほぼなく泥だったりデトリタス的な細かい有機物が薄く溜まっているようなところです。水深は約10㎝。掘っていないので定かではありませんが、おそらく底室は泥が多くを占めていることでしょう。 8時3分(開始から11分)。鉄の矢板に到達。陸生植物の根が張り出しているところをとっかかりにして登っていきます。 体を引っ掛けるようにして、尻尾を根に引っ掛けたまま、頭を下に。 しばらく底を口で探っているようでした。 8時7分(開始から15分)。尻尾で根に絡みついた状態です。川ミミズはこのように水中でもどこかに体を巻きつけることで安心するようです。 8時10分(開始から18分)。頭を水面上にまで上げて、周囲の苔を食み始めました。これは夜間に「オヨギデカミミズ(例えばヒトツモンミミズ)」で観察できる護岸の「苔食み」に似ています。ちょうどこの少し前あたりから、太陽の光が届き始めました。太陽の光が当たってもしばらく苔を食み続けます。 8時16分(開始から24分)。ようやく苔食みをやめ、頭を川底に下げていきます。しばらく根の中であっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら、再度頭を上げていきました。 8時21分(開始から29分)。完全に日光に当たった状態で、鉄の矢板を這い上り始めました。尻尾はらせん状に根にからみつけています。 しばらく進みましたが・・ やはりポロリと落ちてしまいました。8時23分(開始から31分)。 するとようやく川底に戻り、そこから護岸沿いに上流を目指します。 8時25分(開始から33分)。途中、下半身を食べられた?アメリカザリガニの死骸の横を通り過ぎました。もしや殻の中に収まるのでは・・!?と期待しましたが、脇をスルスルと抜けていきます。 ひとつ上流側の凹みに向かって進みます。 8時28分(開始から36分)。途中、大きめの石と石の間に潜っていき、ここが日中に身を隠す場所か?と思ったのですが、そのまま素通りして向こう側に抜けていきます。 石と石の間を抜けて矢板の凹みに入っていきました。この辺りは砂と泥が混ざり合った感じ。周りには小さなエビやウズムシ、カワムツ?の稚魚やヨシノボリ?の稚魚も周囲にはいました。 8時32分(開始から40分)。矢板の凹みに落ち着いた状態。頭を動かして盛んに進む方向を探っているようです。捕食行動かどうかはよくわからなくなってきました。ただ、緊急的な逃避行動は最後まで見せませんでした。 8時47分(開始から55分)。矢板の凹みを抜けて、さらに上流に向かいます。 こんな感じですね。さらに上流に行くと、鉄の矢板は途切れ、そこから先は針金のネットの中に石がたくさん入っているジャカゴに変わります。そこには石と石の間に隙間がたくさんあるので、その穴の中に入って行くのかな?と思っていたのです。 8時48分(開始から56分)。デトリタスのような細かい有機物や泥?が溜まった場所。流れはほぼありません。この先にもう少し進めばジャカゴに到達します。・・が、何を思ったのか、ここでしばらく迷った?挙句、ミミズはUターンして下流側に向きを変えました。待ち人(私)はこの間、先に見える小さな草地でハグロトンボが交尾する瞬間を観察することができました。 もう少しで隠れ家がたくさんあるところにたどり着けたのに・・。 この頃から雲が湧き始め、ゴロゴロと嫌な音が聞こえ始めました。すでに観察開始から50分以上が経過しています。そろそろ川底に潜ってはくれないだろうか・・。 8時49分(開始から57分)。大きな岩に入っていって、これで収まるか?と思いきや、またもやスルー。そして驚くべきことに、ミミズは流れの強い流心のある方向に向かっていったのです!! ここからは隠れ家もない荒野を進みます。 一目散・・というわけでもなく、でもさして迷っている様子もなし・・。 さらに岸から離れ、流れのある方へ・・。 草の根が下流側に伸びてます。根の周囲にはすでに流れがあります。根の向こう側は結構な流れとなっています。水深は15㎝ほどでしょうか。雷雲がゴロゴロいってます。 8時55分(開始から1時間3分)。流れが効いてくると同時に、底質の雰囲気が変わってきます。川底に溜まっていた細かな有機物は、ここでは流れに流されてしまうため、洗われています。小さな石や砂利が砂の上に乗っているようなところになるかと思います(掘っていないのでその下が砂か不明ですが、まあ砂だと思います)。 さらにスルスルと・・。 9時4分(開始から1時間12分)。岸からは1.5m以上は離れています。荒野を進みます。 4mほど先では大きなコイが川底をスパスパやって近づいてきます。もしかすると、コイに食べられる!?・・なんてオチすら思い浮かびました。私がいなければ、コイはこのミミズがいる場所までは問題なく入ってくるでしょうから。 そしてさらに進んだところで・・ 9時7分(開始から1時間15分)。ここでようやく、頭を石と石の隙間に差し込み潜り始めました。 ちなみに珪藻のようなものが薄く積もってはいますが、流れはあります。珪藻のようなものはうっすらと積もっているだけで、その下には石と砂れき、さらにその下には砂があるような場所です。 あとは尻尾を残すのみ! ようやく落ち着いてくれる・・と安心したのもつかの間・・。 今度は頭側を5㎝ほど出してグネングネンと周囲に首をぶんまわします。尻尾は川底にしっかりと入れたまま。 9時17分(開始から1時間25分)。ぶん回していた頭で次のとっかかりを探り当てると、せっかく潜ったのにまた出てきました。さらに流心側に向かいます。流れがありますから、次のとっかかりにより体が十分に保持できるまで、尻尾は川底に差したままです。なので下半身?が伸びています。 9時21分(開始から1時間29分)。それから30㎝ほど進んだでしょうか。ようやくまた、石と石の間に頭を突っ込んでくれました(雷雲が・・)。 少しずつ、少しずつ、入っていきます。 今度は居心地が良かったようで、頭は出てきません。 最後、尻尾の先も消え、完全にミミズは川底へと潜っていきました。 9時23分(開始から1時間31分)。最終的には水深約20㎝。そこそこ流れの効いた砂れき底でした。 最終地点は岸から約2m。 それにしても一番の収穫は、流れの効いている流心方向に進み、最終的に川底に潜っていくシーンを観察できたことです。そして最初の方では苔を食むような捕食行動も見ることができました。 もしかすると、この川では、夜になると餌の豊富な岸際まで出てきて、そこで朝まで過ごし、太陽が出る頃になるとまた川底へと戻っていく・・なんていう生活のリズムがあるのかもしれません。 ただ、これまで日の出ている時間帯にミミズが川底を自然に這っている様子を観察したこと自体が初めてのことですから、なんとも言えません。 それでも妄想を膨らませるのに十分な観察となりました。 1時間31分の観察を終え、発達する雷雲から逃げるようにその場を後にしました。〈若林〉◻︎
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