琥珀に照ったほろ酔い。脂の一滴にはじける炎音。冷えた森の気配。もぐりこむ寝袋の温もり。くぐもる川の音。青白い月光。溯上する鱒への憧れ。懐かしい時間の往来……。秩序立った文章がつくる心象風景にわが身を浸して遊ぶ心地よさ。これはあるいは自分の記憶? まあいいか。どっちでもいいことだ。(1995年 新潮文庫※初出は1992年)