ついさきほどまで、担当している釣り雑誌のインタビューをしていました。

そのひとつに「ブルー・フォックスのステッカーがとてもよい」という話題がありました。

ここでいう「ブルー・フォックス」とは、スピナーなどが日本では知られている(たしか)元々フィンランド発のルアーブランドなのですが、その往年の、ニジマスを加えた青ギツネのステッカーがとてもよい・・という話。

写真を送ってもらいまして、見ると確かに素晴らしく、ほおお・・と唸ってしまったのですが、同時に既視感がありまして。なんだったっけかなー・・と思いながら、このところ電車移動中などに読みふけっていた本山賢司さんの自選集『星の降る森で』をパラリと読もうとしたところ・・ドキッ。

おまえだったのか・・。

 

本山賢司さんは、渓流釣りの本『RIVER-WALK』で「川と森の掟」と題したイラストレーションストーリーをご寄稿いただいている大好きな作家。

物書きとされる人にはきっと主張があって、フィクションにせよ、ノンフィクションにせよ、その主張が散りばめられているものなのかもしれません。

ですが、本山さんの書かれている物語は「物語のための物語」と言いますか。それ自体が書き下ろされたとたんに一人歩きをしていくかのような・・。そんな物語としての独立性がとても好きです。

この自選集のタイトルにもなっている「星の降る森で」は、二人の子供が初めて本格的なキャンプを体験した一夜のストーリー。焚火の煙、テントを叩く大粒の雨、ナイフの重み、ノドを焼くウイスキー、闇の生の気配。満点の星空。

まるで自分で体験したかのような、印象深い、なのに輪郭はぼんやりとした記憶。その喜びの記憶を思い起こすような読書体験を重ねるたびに、書物の持つ力を思います。

実はこの本のあとがきに、少しだけ私のことを書いていただいているんです。

そこに書かれているような話を直接ご本人に聞いたときの驚きと、なるほどぉ・・と妙に納得してしまった感覚は、いまでもとてもよく覚えています。そしてうれしく感じたことも。

放たれた物語は存在として自由であれ。

本山さんなのか、青ギツネなのか、そんな声(主張?)が聞こえた夜でした。□〈若林〉

 

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