本日は晴れ。なんと30℃を超す予報が出ていますが、事務所の中は16℃設定の冷房で涼し・・というより寒いぐらい(パソコンの熱を冷ますためなのです‥)

さて。

本日もはたまたニゴイについて。

このニゴイ、那珂川界隈では「サイ」と呼ばれていることを知りました。

おそらくは‥コイに対しての「細い」「細(さい)」ではないかと‥。

思えばニゴイも「似鯉」ですし、我々が一部で呼んでいる「スマートさん」も「ファットさん(=コイ)」に対する名称です。

まずコイがあり、それと比べられたニゴイという存在がいると‥。

ちなみに琵琶湖のニゴロブナは「似五郎鮒」という説もあるそうで、五郎とはコイのことだそうであります。

ともあれ。

このところ、このニゴイの産卵行動を細々と観察しブログにアップしている中で、1997年に発表された科学論文の存在を教えていただきました。

Spawning Befavior of Hemibarbus barbus.(Osamu Katano and Hiroshi Hakoyama 1997)

「Copeia」という魚類学の科学誌に掲載された「ニゴイの産卵行動」です。

観察地は長野県の千曲川。

閲覧ならば無料で読むことができると聞きまして、さっそくざっと目を通してみました。

すると、過去ブログ【ニゴイとサーモンの根本的な違い】にて私が思い至ったニゴイの産卵行動の様式の解釈が、ほぼそのまま、簡潔に記されておりました。

ざっとその(論文の)概要をピックアップして箇条書きにしますと‥。

・産卵はオスのナワバリ(テリトリー)内で起こった。

・ナワバリオスはメスが訪れる前から攻撃行動(追尾とバッティング)を他のオスに示した。

・ナワバリオスはふらついているオス(浮浪オス?)より明らかに大きかった。

・8.5m×12.5mの観察区間で最大7つのナワバリが見られた。

・近接するナワバリのオス同士は時々、急速に上流に向かって並びながら、また頭をぶつけあいながら泳いだ。

・ナワバリオスは、メスが自分のナワバリに入ってくると「求愛行動」を行った。

・求愛行動はまずメスの背後から近づいて、オスは自分の尻ビレあたりをメスの頭や背中にこすり付けた(458秒の間に47回こすり付けたという観察あり)。

・産卵直前にナワバリオスは身体をメスと並行に揃え、オスメスともに体を震わせて、お互いの尻ビレを近づけた。産卵の時間は3-5秒。

・ペアのオスはペアのメスよりも大きかった。

・オスは一日に少なくても2匹のメスと産卵行動を行った。

・53回の産卵中、7回で1-2匹のスニーカー的なオスが、産卵・放精の瞬間にペアの間に割り込んだ。

・49回中32回の産卵で、ウグイとオイカワは河床に埋まらなかったニゴイの卵を食べた。

・ペアのオスはこれらの卵食いに攻撃行動を加えることはしなかった。

等々‥。誤訳もあるかもしれず、また書かれていることをだいぶ端折って書いてしまっておりますので、詳しく知りたい方は原文をあたってみてください。

それにしても思うのは、科学論文の興味深さ。

確かな観察と記録、そして事実であろうと推測するための統計等々、大変な執筆の苦労と厳格なる審査の末に世に出される書物を、もっと味わってみたいな‥と思います。

さて。

いろいろと興味深いと思った箇所はあるのですが、それを書きだすと、あまりに長くなりすぎてしまうので、それはまたおいおい機会があれば・・ということで、私が今、最も気になっているのは産卵前の行動、つまり「前産卵行動」です。

(ちなみにここから先は、憶測含みの妄想に近いものとなります・・)

繁殖期間中の、とある区画の状況を大きく二つに分けてみます。

①これから産卵をしようとしているメスが多数動いている状況。

②メスがいないか、いても産卵を数回終えて?休んでいる状況。

 

①の場合は、オスも活発にナワバリを維持していて、動きもよく、比較的短い時間で産卵・放精の観察もできるような気がしています。

一方、②の場合(これがほとんどなのですが)もナワバリを張っているオスを見ることはできます(ナワバリを張っている状態と、そうでない状態のオスが瀬にはいるような気がしています。産卵を意識しているナワバリオスは決まった場所を2~3カ所行き来しながら、尻ビレと尾ビレで川底の様子を探っていることが多い気がします。産卵を意識していないように見えるオスは、少しずつ動き回りながらスパスパと川底で何かをついばんでいる行動をよく取っています)。

ナワバリを張っていても、なかなかメスが訪れない。そんな時のナワバリオスの行動で少し気になっていることがありまして・・。

それは「休んでいるメスを誘いに行く行動」です。

それを観察したのは小型のオスでした。

それ以前(30分ほど前)に、大型のオスと産卵・放精を終えているメスが岸際のえぐれで休んでいたのですが、大型のオスはいなくなり、その代わりに小型のオスが、岸から3mほどの所にナワバリを張ったように定位していました。実際に数回は他の来遊オスを追いはらったかと思います。ですが、メスは産卵直後ですから、いくら近くで小型オスがナワバリを張っていても、そこに出てきてくれないんですね。

すると、小型オスは、メスのところまで寄り添っては自分のナワバリに戻る行動を取り始めたのです。

結局、最後には大型のオスが下流から現れて(一度メスと産卵・放精を行ったオスかもしれません)、その瞬間に、それまでつれないそぶりを見せていたメスがいきなり大型オスと並び始めて瀬の中央に出たかと思うと、二度目の産卵を果たしたのです。

別の時にも、似たようなナワバリオスを観察することができました。

そのオスは、自分の最も気に入っている?と思わしき地点Aに定位しながら尻ビレと尾ビレで盛んに川底をなでています。そして時折、さらにオープンスペースとなる瀬の中央の地点Bに移動して少しの時間、その場所を確かめた後に、また地点Aに戻るという行動を繰り返し、その合間に、岸際のエグレ(地点C:泥底で産卵には適していません)に近づいてはまた地点Aに戻る・・を繰り返すような行動を取りながら、時に、地点Cからそのまま岸際を上流に泳いでいって、また地点Aに戻ってくるというような、、メスを探しているような行動を取っていたのです。

こんな感じです。

最終的に、どの場所で産卵・放精に至るのかは確認できておりません。ただ、ナワバリオスは一定面積のナワバリを維持しつつ、ナワバリの中に重要なスポット(地点AやB)を持っていて、重要なスポットでは尻ビレや尾ビレでその状況をしばしば探っているように見えました。そして時には地点Cや、さらに10m以上の上流にまでふらふらしながら休憩中のメスを探したり、メスに誘いをかけにいっているように見えました。

ちなみに上の①のような産卵前のメスが多く遡上してくるような状況は観察例が少ないのですが、ナワバリオスはあまりふらふらしていなかったように思えます(地点ABのような2カ所を行き来している様子は数回観察できました)。

ニゴイオスの尾ビレです。下がこすれて白くなっています。

かなりの長文にお付き合いをいただき、ありがとうございます‥。〈若林〉□

 

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