今日は曇ったり晴れたり。 過ごしやすい一日でした。 事務所で作業をしたり川をとぼとぼ歩いたり。 このところニゴイばかり観察していましたので、目がニゴイに・・いや、視線がニゴイに向いてしまうのです。「サーチングイメージ」というそうです。クマばかり追いかけている人はクマの目が、ニゴイばかり追いかけている人はニゴイの目‥ができあがる、というわけです。 で、もうそろそろ諦めていたのですが、なんと本日、最大の撮影チャンスが期せずして訪れたのです。 それはモテオスの出現でした。 なんだか盛んに動き回っているオスがいました。ナワバリのポジションをしばしば確認しつつ、上流へも探索に行く・・みたいな。仮にこのオスを「モテオス」とさせてください。 オスのナワバリについては、昨日のブログ【産卵前の行動が気になる】にて、一定面積のナワバリの中にいくつかのホットスポットがあることを書きましたが、本日のオスも2カ所のホットスポットをキープしておりました。 こんな感じです。ちなみに産卵場は瀬頭が多いように思っておりましたが、今回の地点Aはトロ尻、地点Bはトロの下流域でした。 観察をしていますと、上流から真黒くてモテオスと同じぐらいのオスがメスを引き連れてやってきまして・・。 なんと地点Bで産卵・放精をしてしまったんです。そこはモテオスのナワバリだったはず‥ですが、あまりにも鮮やかに決められてしまいました。モテオス、なんとも悔しい失態? ですがですが、その15分ぐらいあとに、おそらくは違うメスだと思うのですが(定かではありません)、なんとモテオスが上流から引き連れてやってくるではありませんか! 下図のような追い越し求愛行動をしながら地点Bを経て、地点Aにまで連れてきます。 ただ、メスは地点Bも気になっているようで、モテオスが追い越し求愛行動で下流にメスを誘導しようとするも、メスは地点Bに進んだりもします。そして観察中に地点Aで産卵・放精に至ったのです。 産卵を終えると、メスは上流に去り、モテオスは地点Aのナワバリに居座りました。時々、地点Bの様子を探ったり、さらに上流に泳いでいっては、また地点Aに戻ってきたり‥。 そうこうしているうちに、15分後ぐらいでしょうか。なんとまたしてもモテオスはメスを連れてきたのです。 追い越し求愛行動をしながら‥モテオスは自分のテリトリーにメスをいざなっていきます。 今回の観察で、思いを強くしたのですが、メスは卵を産む直前になると、下図のように、口をスパスパさせて産卵場所を確かめるような行動をとります。 そしてモテオスとメス(同一かは不明、おそらく同じメス)は、今度は地点Bで産卵・放精に至りました。 そこで私は地点Aにカメラをトプンと沈めました。 すでに2回連続で産卵・放精を行っている。3度目の正直は、あまり期待できないが、モテオスのことだ。きっとまたメスを連れてきてくれるに違いない! そして地点AかBについては、五分五分の確率。 モテオスです。左の小さな稚魚はおそらくヌマチチブ(←「スミウキゴリでは?」というご指摘をいただきました! 過去ブログ【世界の広さを知りたければ・・】でも写真を撮影していました)。 追い越し求愛行動で、下流へとメスを押しやりながら、自分のナワバリに入った途端、下流側に下がってメスの様子をうかがうモテオス。 奥がモテオス、手前がメス。メスのほうが決まってサイズが小さいです。 こんな感じにメスの前を追い越すように横切り反対側に出ます。 そして今度は逆側から・・ すり寄っていきます。 こんな感じで尻ビレ付近でメスの頭部をなでている感じ。 そして、少し気になっていたことが私的に明らかになりました。 それはサケマスで見られるオスの「求愛行動」(quivering=小刻みにブルブルと体を震わせながらメスに擦りつける行動)がニゴイでは見られないのだろうか‥ということ。 今回のモテオスは、見事に激しいquivering(ブルブル求愛行動)を見せれくれました。 やっぱりニゴイはサーモンに似ています!! 「求愛行動」には2パターンあるようで、ひとつは追い越し求愛行動、そしてもうひとつは今回観察できたquivering(ブルブル求愛行動)です。 またもや産卵が近いのでしょう。 盛んに追い越し求愛行動とブルブル求愛行動のミックスでメスをナワバリにいざないながら、産卵をうながします。 ところがここでハプニングが発生! オスの追い越し求愛行動が勢い余って・・ カメラに激突! 傾いてしまいましたー・・。 そしてメスはスパスパ!! 砂利を吸いこんで吐き出したりもします。どんな意味があるのでしょうか。 宴もたけなわ。手前がメス。奥がモテオス。カメラに近い・・。 そしてもう一発、ガスッ!!っと・・。 完全に天空を向いてしまいました・・。水面にメスが映ってます。スパスパやってます、これは・・くるのか? モテオスいそぐ!(メスは水面に映りこんでおります)
横に並んで・・。 産卵!! オスメスともに体を激しく震わせています。 メスは口を開けますが、オスはこれまでの観察から、あまり開けていないよう・・。 ああ・・(映ってない・・涙)。
以上となります。 これまでにない(そしてもうきっと来ない)最高のタイミング・位置取り・条件の合致はモテオスの頭突きで不意になりましたが、いろいろなことがわかりました。 満足です。 そして少し所用を済ませて帰り際にまた覗いてみると(この間、15分ほど)。 なんとまたしてもモテオスはメスを引き連れ・・産卵・放精に至ったのでありました。 メスが同一かは定かではありません。少し違ったような気がしています。 ですがモテオスは、およそ2時間の間に、なんと少なくても4回放精をしたことになります。 おそるべしモテオス・・。 最後に今日の観察によって知ったいくつかのことをまとめます。 【まとめ】 ・オスはテリトリーの中にホットスポットを2つ持っていることもあり、その両方で産卵・放精に至る。 ・メスは卵を産む直前にスパスパと砂利を吸ったり吐いたりすることが多い。 ・メスは15分間隔ぐらいで続けざまに産卵することがある(3回まではおそらく確か)。 ・オスはサケマスのようなブルブル求愛行動(quivering)を行う。 ・オスは上流に泳いでメスを誘い、追い越し求愛行動により、メスを自分のテリトリーにいざなう。 ・スニーカー(ペアになれない小型オス)は斜め上流から接近してくることもある。 ・同じサイズのオス同士の争いは長い。 ・オスは放精の瞬間、口を開けていないような気がする。 ・そしてモテオスはガングロではなく、どちらかというと黄味の強い金色でした。 貴重な観察体験をありがとう、モテオス。〈若林〉□
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