梅雨です。が、すでに真夏っぽくもある埼玉南部です。 時折の晴れ間は、青い空に白い雲がもくもくと、いい季節ですね。 さて。昨日の朝、仕事前に少し近所の川を歩いておりましたところ、1羽のカワウがトロと瀬の間で狩りをしていました。 カメラで覗きながら観察しておりますと、面白いことに気づいたんです。 カワウは結構執拗に何かを追い回しているようですが、最後の瞬間、カワウの真正面からピョンと水面上に魚が飛び出し、それをパクッとカワウがキャッチしたのです。 これが続けざまに2回。 過去、カワウに追いかけられたオイカワがピョンピョントビウオのように飛び跳ねて逃げる様子は観察したことがありますが、真正面から飛んだところを食べられたのは、なんだか不思議な気がしました。 すでに多くのアユが海から遡上してきていますから、アユを食べているのかな? と思っていたのですが、あとで食べるシーンをじっくり確認するために撮影した動画をスローで回していたところ、2匹ともオイカワのオスだとわかりました。 少し意外な気がしました。瀬にはアユがたくさんいますから。 でも食べているのはオイカワなんだ・・という感想。 産卵期のオイカワといえば、一昨年のアオサギが思い起こされます。 こちらはヤマケイ新書『武蔵野発川っぷち生きもの観察記』でも顛末を書きましたので、ここで改めて詳しく書くことはしませんが、概要はこちらの過去ブログ【青である理由】をご参照ください。 アオサギはオイカワの産卵場である浅い瀬に立ち、ひたすらオイカワのオスばかりを狙って食べているようでした。またぜひ見てみたいと思っているのですが、昨年も今年もまだ観察できておりません。アオサギが瀬に降り立たないんですね。河川改修で人が入りやすくなったのも一因かと思われますが、おそらく別の狩り場を見つけているのでしょう。 ともあれ、今この季節はオイカワの産卵期です。オイカワ釣りをする人はご存知かと思いますが、オイカワのオスは実に美しい青色の婚姻色に染まります。 顔が黒く、体には青を基調にメタリックグリーンやらピンクやら派手派手になります。顔のぶつぶつは追星といって、こちらも産卵期のオスに現れる二次性徴です。 おそらく先のアオサギは、この目立つオスばかりを狙っていたのかな?なんて思っています。 前置きが長くなりましたが、今回はカワウの話です。 今朝も少し川を見てきました。 カワウというよりも、オイカワが産卵していないかな・・と思って。 すると1羽のカワウが、昨日と似たような狩りをしていました。 基本的に、日中のカワウの狩りは、上流から下流に向かって、数羽で少しずつ流れ下りながら、魚の群れを見つけては襲い掛かるスタイルが一般的ではないかと思います。朝方など数が増えれば集団で追い込むような狩りをしますし、その際はコサギやダイサギなどが水辺でおこぼれを狙って集まってきます。 近所の川の場合、日中はあまり大きな群れを作りませんので、単独もしくは数羽で長い距離を流れ下りながら、いい場所を見つけたら、また上流に戻っては流れて・・の繰り返しで狩りを続けます。 昨日と今日見たカワウの狩りは、もう少しストレッチが短いのが特徴でした。一つのトロと瀬の境目を繰り返し繰り返し、行ったり来たりしています。そして時折、ジェット噴射のような泡を立てながらものすごい速さでダッシュして、オイカワを食べていたのです。 今朝も似たような狩りをしていました。上写真は、ダッシュはしていません。短い潜水を繰り返して、何かを探しているようです。 そして獲物にロックオンすると、一気にスピードを上げ、追跡を始めます。 逃げる相手を追いかけているのでしょう。上流側に行ったり下流側に行ったり、執拗に追いかけます。 ご覧になれますでしょうか? 水飛沫を上げるカワウの前方(左側)で水面を割ってジャンプする魚が・・婚姻色に染まったオイカワのオスです! 数回のジャンプをして必死に逃げるオイカワ、ものすごい勢いで追うカワウ。 そしてついに、とらえられてしまいました。 飲み込むのは一瞬ですが、長い尻ビレからもオイカワのオスとわかります。 また次の狩りへ・・。 首を伸ばして探します。 下流側へも。 ちなみにこの辺り、カワウの周りにはアユがびっしり群れているのですが、眼中にはない様子。 アユはこんな感じ。カワウがくると逃げるのでしょうが、そこまで一気に散っている様子もなく、いなくなるとすぐにまた集まります。あまりじっくりと観察していませんが、もしかすると、あまり逃げてもいないのかもしれません(ちなみにカワウはアユが大好物です。集団で狩りをするときなどはアユはメインターゲットになっていることも多いです)。 さあ、獲物を見つけたぞ! 岸際の方へ追い込みます。 捕まえたかな? 顔が黒い。やはりオスのオイカワです。 さあ次はどうだ? ものすごい勢いでUターンしたかと思ったら・・ 飛んだ! そしてダイブ! 魚がカワウに乗り上げてしまったような・・。 捕まえたのは、いわゆるガングロ(顔の黒い大型のオス)でした。 今朝は10分ほどの間に、4匹のオスを捕まえる様子を観察することができました。すべてオスです。 これには何か、意味があるのでしょうか? このカワウの狩りの要点を整理すると・・ ①狩り場がピンポイント トロから瀬に移行する境目で、10mほどでしょうか。水深は15〜20㎝ほどはあり、かつてアオサギが狩り場としていたオイカワの産卵場よりはだいぶ深い場所となります。ここでオイカワが産卵行動をしているかは、わかりません。 ②短い潜水で探し、見つけるとダッシュ これは一つのパターンのように見えました。ちなみに昨日はもう1羽途中からやってきて、2羽同時に短い潜水による探索を行なっている姿は観察できましたから、あるカワウだけが身につけた狩りではなく、ある程度は一般的なスタイルなのかな?と思っています。 ③かなり執拗に追いかける ターゲットに照準を合わせると、そこからはかなり長距離、追い回すように執拗に追いかけます。まだ観察例が少なくなんともいえませんが、狩りの成功率は50%ぐらいな感じでした。 ④今のところオイカワのオスばかり! これが私が最も気になっている点です。実のところ、オイカワのオスに特化した狩りのスタイルなのではないかと期待しています。そこにいるのは元々オスばかりなのか? もしくはメスはカワウにスルーされているのか? たまたまなのか? もう少し観察を重ねることで傾向が見えてくる気がしています。 ただ、執拗に追いかけるスタイルの狩りでは、獲物が目立って大きくなければ、すぐに見失ってしまいそうですし、成功の報酬としても割に合いませんから、理にはかなっている気がします。 できたらカワウの個体識別をしたいのですが、これがアオサギ同様、なかなか難しく・・。でもそんなところにも注意しながら、いますこし観察を続けてみたいと思います。〈若林〉□
【お知らせ】川辺の自然観察をまとめた一冊、『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』発売中です!(アマゾンの販売ページはこちら) ★RIVER-WALK Vol.1~Vol.3発売中です!★
|