今日は全国的に大雨予報。

このところいい感じに水が澄んできた川も、またコーヒーぎゅうにゅうに戻ってしまうでしょう。

ナマズの乗っ込みは楽しみですが‥。

さて。

このところ、4~5日観察を続けているアオサギの捕食行動。

瀬で産卵するオイカワを、同一のアオサギと、飛来するコサギが食べています。

狩りの様式など、いろいろと面白いのですが、それらは過去ブログをご参照ください。

5月25日【アオサギの狩りパターン壱ノ型】

5月26日【今日もいた】

5月31日【また今日もいた】

6月1日【水面が隔てる二つの世界】

6月3日【コサギはすごいけどアオサギが好き】

アオサギたちが繰り返す狩りを観ていて、気になったことがあったんですね。

それは何かと言うと‥。

その前に、ハイライトでサギたちが捕まえたオイカワを見てください。

 

さて・・。お気づきになられましたでしょうか?

4日間ほどの撮影できた記録だけで22例。

狩られたオイカワを見てますと・・

①オスが21匹

②婚姻色の目立たない、おそらくメスもしくは未成魚が3匹

そのうち2例は①②が2尾一緒に狩られていましたので、メス単体で狩られたのは1匹だけとなります。

つまり、圧倒的にメスに比べて婚姻色のはっきりしたオスが多く食べられている、というわけです。

私が観察しているのは、毎回夕方の1時間ほどですから、当然それ以外の時間帯にも多くが狩られていて、その様子は観察できていないのですが、この性差は気になります。

この瀬にはオスが多いのか?

サギ類がオスを選んで狩っているのか?

オスが狩りやすいのか?

いくつかの理由が考えられますが、そんなことを昨日のツイッターでつぶやいたところ、著名な魚類生態学者の方から「性選択と生存をめぐる選択のトレードオフをまさに目撃しているのではないでしょうか」とのコメントをいただきました。

また、「有名で古典的な例では、グッピーは捕食者のいない環境ではヒレの伸張や派手さが増しますが、捕食者がいるところでは抑えられます(淘汰–>進化が生じます)。同じような原理をいま目撃されているのではないでしょうか」とも‥。

なるほど!! これはとても面白い話です。

上手くご説明できるかわかりませんが、つまり‥こういうことだと思います。

オイカワのオスはとても鮮やかな青やピンクに染まっていますよね。そして顔は黒く口の周りには「追星」と呼ばれるブツブツができています。

タナゴ類とともに日本を代表する鮮やかな淡水魚です。

対してメスは、オスに比べてやや地味です。

こちら(おそらく)メス。口の周りの追星がなく、薄っすらとピンクが入っているぐらいで全体的には銀色です。

問題はこの、オスの鮮やかな色です。これは「婚姻色」と呼ばれており、繁殖期にだけ出てくる色なんですね。

メスも婚姻色には染まるのですが、一般的にオスの方が鮮やかになります。

なぜこのようにオスの色が鮮やかになるのか?と言うと、それが上のコメントにも出てきた「性選択」による結果、というわけなんです。

性選択とは、繁殖にとって有利な性質が選ばれていく傾向のことです。

有名なところではクジャクのオスの羽でしょうか。あれはメスを惹きつけるための装飾と言われてますが、鮮やかであればあるほどメスを獲得しやすい。つまり繁殖が成功しやすいため、派手な羽を持つ子孫が増えて、その結果としてオスの羽はどんどん派手になっていった・・という感じ。

一方で、派手になるということは、そのぶん外敵に見つけられやすくなったり、じゃまな装飾が付いているぶん、動きが悪くなって襲われやすくなったりと、リスクもあります。

それでもクジャクのオスの羽が派手なのは、襲われやすくなるリスクを含めても派手なほうが結果として子孫を残しやすかった‥という結果なんですね。

オイカワのオスの派手な婚姻色も、ざっくり言えばクジャクのオスの羽と同じようなものです。

効果は‥と言えば、メスを惹きつける効果と、ライバルのオスに誇示する効果といったところでしょうか。

ですが、その反面、やはり目立ってしまいますので、外敵には襲われやすくなるのだろうと‥。そのひとつの形として、サギ類が極端にオスばかりを狩っている現象があるのだろうと‥。そんな見立てというわけです。

「トレードオフ」とは「一得一失」。つまり、何かを得るためには何かを失わなければならないという関係性のことです。今回私は、オイカワのオスが配偶者を得るために襲われにくさを失った‥というトレードオフの現場を覗き見たのではないか‥というわけです。

メスが1匹食われる間にオスが20匹ほど食われているというのは、かなりオスにとって不利な条件のように思えますが、それでもこの川のオイカワのオスの婚姻色は鮮やかです。裏を返せば、それだけサギ類に襲われやすくても、鮮やかな色をまとっていた方が子孫を残すうえでは有利、ということなのでしょう。

ただ、この川よりもっとサギ類などの捕食圧が強い川では、果たしてオスは鮮やかなブルーを保っていられるでしょうか? メスを獲得しやすい派手オスよりも、サギ類に襲われにくい地味オスのほうが結果として子孫を残しやすいという条件もあるかもしれません。

ここのオイカワの婚姻色は地味だなぁ‥と思うような川は、もしかするとサギ類がめちゃくちゃ多い川なのかもしれませんね。

美しきオイカワのオスの婚姻色。

こちら別の川のヌマムツ(かな?)のオスの婚姻色。君はなぜ青くはないのか?

こちらオイカワと同じ川の野良グッピーのオス。尻尾のオレンジ色の部分がメスを惹きつけるのだとか‥。

そしてニゴイのオスはなぜ、オイカワのオスのように派手派手にはならないのか?

産卵様式は比較的似ているというのに。オイカワよりも大型だから捕食圧だって強くはないだろうに‥。

ニゴイのメスが地味オス好み、というわけなのか‥?

ちなみにニゴイのオスは産卵行動中に一瞬で色の明暗を変化させることができます。上の写真はベージュ近くにまで明るくなった状態。オスが単体で産卵場でメスを待つ時は、黒く変色することが多い気がします。

その意味はなんなのか‥?

妄想は膨らみます。

ナゾだらけです。〈若林〉□

 

PSグッピーの性選択については佐藤綾さんの論文「グッピーにおける性淘汰とオスの体色の多様性」に総論的なことがわかりやすく記されていました。ご興味がある方は公開もされていますので、ぜひ。

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