今日は晴れ。暑くなりそうな埼玉南部です。 仕事前に少しだけ川へ。このところ急激に気になり始めたカワウの狩り様式を観察するために川を歩いてきました。 今朝は5、6羽のコサギを引き連れての狩りを見ることができました。 場所はトロから瀬への移行するあたり。まさにこのところ気になっているオイカワのオスを狩る場所です。オイカワのオスの狩りについては過去ブログ【カワウもこの時期、青が好き?】をご覧ください。 オイカワのオスを追尾するような時折の猛烈なダッシュも見ることができましたが、確実にオイカワのオスを狩ったと思えるシーンには出会えず。2回ほど見ることのできた口元の魚はオイカワのメスか、若いオイカワか、アユのような銀ピカの魚でした。執拗に同じピンポイントを繰り返し狙うオスのオイカワ狩りとは少しまた違っているような雰囲気。 もう少し追い方も散漫で、群れを襲っているようにも見えました。 しばらくしてカワウが飛び去ってしまったため、川を歩いておりますと、橋の上から小型のオイカワの群れを観察することができました。未成魚だと思いますが、畳2畳分ぐらいの結構な群れ。いるんだなーと思って通り過ぎ、川を歩いていると、上流側からカワウが水面を滑るようにして降りてくるではありませんか。 オイカワの群れに対してどのような行動を見せるのか。それを観察してみたいと思い、しばらくカワウと並びながら私も川を降ります。ところがカワウは途中、砂地のトロに留まり、そこで潜ったり上がったりを繰り返したのです。 緩慢な潜水。水中に潜るとぐるぐるとゆったりとあたりで何かを探しているようです。そのうち一匹の魚を捕らえました。 シャッタースピード設定が遅すぎてブレブレ・・。白っぽい。オイカワのメスでしょうか。それにしても気になったのは、潜水中の緩慢な動きです。まるで川底に落ちている石でも拾ってくるようなのんびりとした狩りで、見事にオイカワのオスぐらいの大きさの魚を仕留めたのです。 再び、狩りを開始。 またしても捕らえましたが、またしてもピンボケ・・。ですが白い魚体ははっきりと見えます。なんだろう。結構大きいけど。このサイズのオイカワのオスならば、もう少し青黒っぽく見えるはず・・。 普段ならば、これ以上の違和感も興味も抱かなかったかもしれません。ただこのところ注目していたオイカワのオスの狩り様式に比べて、そのあまりもの緩慢な動きに俄然興味を抱き、しばらく観察を続けることに・・。ザリガニを捕まえているのか?と思いましたが、魚は魚です。そしてオイカワよりも少しだけ捕まえた後、飲み込むのに時間がかかっているのも気になりました。 そしてついに、その時がきました。 カメラのピントがようやく合ったのです・・。 それをみて、ムムムッ!!っと、思わず息を飲みました。 わかりますでしょうか。 拡大します。 これは・・まさしく、カマツカです! 白く見える腹もバッチリと。これまで数回見た狩りも、おそらく獲物はカマツカだったのでしょう。 いろいろなことが頭を渦巻きました。 思いだすのはちょうど一年前のこと。 ヤマメのパーマークのような模様にむむむっときたこのカワウの獲物。この時も安定のピンボケでしたが(汗)、これもカマツカだったのではないだろうかと(この時の様子は過去ブログ【茅場観察そしてコアジサシとカワウの狩り】をご覧ください)。 なにせ、今回とほぼ同じ場所でしたから! そしていろいろ合点がいくことに気づきます。 まず場所。 カワウが狩りをしていたのは、産卵期を迎えるオイカワのオスが集まる瀬頭ではなく、もっと流れが緩く砂地のトロ場でした。水深は50㎝ぐらいかな。そして上の写真のように、砂が溜まりやすい水門の前でも繰り返し潜水と探索を繰り返していました。 おそらくこの時のカワウはカマツカを専門とした狩りを行っていたのではないでしょうか。カマツカもオイカワ同様、今頃が繁殖期となりますが、産卵行動は夜間に限られているようです(中島淳さんの論文「カマツカの産卵・初期生態に関する一知見」などに詳しく書かれています)。昼は何をしているかというと、あまり詳しく知られてはいないようですが、多くは砂の中に潜っているのではないかと言われています。私は同水系で水中観察した時に数匹のカマツカを観察していますが、決して多くいる印象はなく、日中は多くが砂の中に潜っているからかな・・と思っていました。なにせ「スナモグリ」などとも言われる魚ですから。 カワウはもしかして川底の砂を掘り掘りしている・・!? これは定かではありませんが、少なくても水面上からの観察では掘っている感じはありませんでした。あくまでも目で姿を見つけて拾って食べているような感じ。 先にも書きましたが、砂地で見つけてしまえば、カワウにとって狩ることは意外と容易いのかも・・なんてことを思いました。 カワウがオイカワのオスを狙って?狩りをするのも、アオサギがオイカワのオスを狙って狩りをするのも、それがその季節、その場所、そのタイミングで、最も効率的に獲物を得やすいやり方だからなのではないかと思います。 だとすると、仮にカマツカに特化した狩り様式をとっているカワウがいるとするならば、それはこの時期、この場所、このタイミングに、ある程度たくさんのカマツカがいることを意味しているのではないでしょうか。彼らは熟練の川漁師なのです。無駄なことはしないはず。 それはもしかしたらカマツカが夜間に瀬で行う産卵のために集まっているからなのかもしれません。産卵後に休んでいる場所なのかもしれません。いずれにしてもカマツカの密度が高まっているタイミングなのではないでしょうか。それが産卵のためだとすれば、夜間に産卵場所となる瀬は、限りなく絞り込めてきます。 気になります・・。〈若林〉□
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