今日は秋のようなすがすがしい風が吹いた晴れの一日。

GW明けではありましたが、少しだけニゴイを観察してから事務所へ。

産卵の瞬間を迎えるまでのメスのコンディション具合によって、雌雄の産卵行動は、いろいろなパターンを見せるのであろう‥と仮説を立てながら、これからもタイミングが合えば、観察を続けていきたいなーと。

そんなことを思いつつ‥実はこの春に、もうひとつだけ、産卵行動を見ておきたいなと思っている魚がおりまして‥。

それはこちら。

ナマズであります。

ナマズはルアーでの釣りで長く親しんでいる魚ではありますが、実際に産卵行動を目にしたのは、もう20年ほど前のこと。目の前の小さな水路でギューギューと音が聞こえるくらい間近で観察できたのですが、さほどの関心も抱かず写真にも撮らず。

思えばもう10年以上もナマズをこの事務所近くの川で釣ってきているのですが、産卵場所を把握できていなかったんです。

ナマズは元々、河川の氾濫に合わせて産卵するような性質を持っていたようで、人間が多くの川を氾濫させなくしてしまってからは、代わりに田んぼや用水路を疑似氾濫原(?)として利用してきた歴史を持っているようです。

我が事務所近くの川にも近接する田んぼはあるのですが、用水はポンプ式になってしまっており、川から直接引き込む形の水路は、私の知る限り、ほとんどありません(知らないだけかも・・)。

ですが、ナマズが結構いることは、釣りをしてよくよく知っていますので、そう遠くないどこかで産卵もしているのだと思います。

今年はマルタウグイ、コイ、ニゴイの産卵行動を観察することができました。その流れで、今度は5~6月にピークを迎えるであろうナマズの産卵行動を観察してみたいなと、そんなことを考えたのです。

候補はいくつかありました。

まずこちら。

本流に流れ込む川幅1mほどの細流です。この上はすぐにコンクリのトンネルになっておりまして、地下水路を辿ると「ゴイサギの楽園」と呼んでいる三面護岸の干潟空間に繋がっています。楽園につきましては過去ブログ【仮説を立てる楽しみ】をご参照ください。ゴイサギの幼鳥はこの先の地下トンネルをくぐって、この細流と楽園との間を行ったり来たりしていたと推測しています。

コイのハタキはすでに観察済み(過去ブログ【コイのハタキがはじまった】参照)。

雨が降ったタイミングで差してきて産卵‥という流れは十分に考えられるでしょう。

次にこちら。

こちらも幅1mほどの水路。三面護岸の通称「ミニ潟」です。

川とは水門で繋がっていて、コイが上がってくるのは観察していますが、平水時は水深15㎝ほど。途中で段差もあったりするので、ここも増水時のタイミングでしょうか。ガマのような抽水植物が所々に生えているので、きっと産卵しにやってくると思っています。このミニ潟の水源は、おそらくですが湧き水ではないかと踏んでいます。

そして最後に‥大本命のこちら!

潟(GATA)‥でございます。

川と水門で繋がる三面護岸の水路です。

三面護岸の水路なのですが、おそらく上流は田んぼの排水路であるために(確実とは言えません‥)、少しずつ泥が供給されて、堆積し、マット状になり、そこにマコモのような植物が繁茂しています。年に2回ほど、水路としての役割を完璧に取り戻すために、泥が除去され、完全無欠の三面護岸へと変わりますが、また少しずつ泥がたまり、草が生え、実にさまざまな生きものが利用しています。

私が確認しただけで・・

タヌキ、アライグマ、イタチ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、キジバト、タシギ、アオサギ、チュウサギ、コサギ、カワセミ、ゴイサギ、イソヒヨドリ、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ、ハシボソガラス、カルガモ、コガモ、ホシハジロ、アメリカザリガニ、コイ、ヘラブナ、ボラ、ニゴイ、ナマズ、メダカ、ライギョ、クチボソ、ギンヤンマ、などなど‥。

今年は泥マット除去が中途半端に行われたため、途中で寄せられた泥マットが地形を作り、なめ滝のような場所を作ったりして、その上流は平水時でもやや水深が保たれ(20㎝ほど)、下流側は平水時は5~10㎝ほどと、大型の魚は何かきっかけがないと登ってこれず、川とは遮断される・・そんな環境となっています。

こちら昨年の5月23日に撮影したナマズ。増水時に遡上したものと思われますが、戻り切れないまま水位が下がり、干からびてしまったようです。

こちらが潟の河口部。写真は、大潮の満潮時で本流の水位が上がり、潟に魚たちが侵入できる潟OPENの状態です。本日の17:11分。ほぼ満潮時ですね。海からは程遠く、潮は上ってきませんが、下流部で海の水により押されるためか、水位は潮汐によって変動します。

ナマズの産卵行動が期待できるタイミングは潟OPENのタイミングですから・・

①大潮の満潮時

②大雨が降ったタイミング

③田んぼの水を落としたタイミング

となります。

昨晩は雷がかなり頻発していましたが、どのぐらい雨が降ったかは不明。ですが、今日は大潮だし、もしかしたら上がってくるかもなー・・なんて思いつつ、昼間に横を通り過ぎたところ・・

潟の上流側には十分な水位(15㎝ほど)があり、コイの追尾行動が観察できました。

そう、先ほどお伝えしました、途中にある、なめ滝のおかげで、その上流側がちょっとしたプールになっているのです。なめ滝の下流側は水深5㎝ほどなので、下流から上がってくるのは現状では不可能。下流へも下れませんから、ランドロック・・というか、潟ロックされてしまった魚たちなわけです。

コガモはまだ数羽居残ってます。

いかにも・・な、疑似氾濫原風情。

・・と、そこに!

おお、ナマズがいました!

ヒゲが折りたたまれているのが印象的です。

釣ったナマズは大抵、昂奮しているためか、ヒゲが立っているものです。

ピーンと張っている感じなんですよね。

こんな感じのヒゲは新鮮に感じます。

なかには重なりあっているものも。

この状態でジッとしてました。

下のナマズはヒゲを立てていますね。

ヒゲで何かを交信しているのかも・・。

ナマズ同士で追尾しているものも数例観察できましたが、コイに追尾しているナマズも結構見ることができました。

身体をコイに向けてグネリとひねり・・

身体をコイにすりよせている感じ。

ちなみに、ナマズの産卵は、オスがメスの身体にグネリと巻きついた状態で産卵・放精を行うとのこと。それに類する行動なのでしょうか。単独でぐねんぐねんしているナマズもおりました。

ナマズの産卵行動を見たい・・と思ったその日に見ることができてしまうという・・。

さすが潟。誇るべき三面護岸です。

そして馬のいななく夕刻・・満月が上ります。

潟の河口部の水位はさらに上がり、コイが多数型に上ってきておりました。滝までは水位が行き届かず、滝上とは連絡できませんでしたが、下流は下流で、ナマズも数匹、コイを追尾したり、ナマズ同士が追尾している様子を確認することができました。

ですが、あれですね・・。

夜間の観察はライトを要するため、住宅密集地であるために注意が必要。

近隣の住民に怪しまれてはなりませんので・・。

雨降りもしくは雨後の日中に狙いを絞ってみたいと思います。

潟はナマズのゆりかごです。〈若林〉□